2017 / 11
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目の前には、超絶美形。漆黒の髪に深紅の瞳、着る人を選ぶだろうデコラティブな衣装をあっさりと着こなし、気品すら漂わせている。うわ足長っ。腰の位置高っ。

ごてごて飾りがついたマントをひるがえし、かつん、かつん、とブーツの音を響かせながら、階段を降りてくる。なんの番組。なんの映画。似合いすぎだろう。決まりすぎてて厭味っぽいぞ。ちょっとアレだけどね。頭にねじくれた角あるけどね。背中に真っ黒な羽あるけどね。触ったら痛そうな、爪が長く伸びてるけどね!

あたしの目の前まで来ると、超絶美形はにこりともせずにこちらを睥睨し、言った。


「そなたがこたび、召喚されし勇者か……よくぞ、この城までたどりついた」

「他力本願な王様始め、この世界の住人にはえらいメーワクしたわ」


伝説の聖剣とやらを構えながら、あたしは言った。


「フツーの女子高生呼び出して、世界の為に働けって、何様? この世界の事は、この世界の人間がどうにかするものでしょうが! こんななまくら一本で、右も左もわからない人間を城からほうり出すって、やる気ないにも程があるでしょ〜! 国民死なせたらバッシングあるから、異世界から勇者呼び出して戦わせてるって、思い切り言いやがったわよ、あのクサレ王!」


それなりに美形だったが、やる気のなさが丸わかりの祝福をおざなりにされ、城から追い出された。予算もないとかで、持たされたものは、この聖剣の他には服が一式と三日分の食糧だけ。おかげで魔王城のある荒野にたどり着くまで、アルバイトをしながら食いつなぐしかなかった。


「皿洗いと踊り子が本業になりかけたわよ、おかげで!」


バレエを習っていて良かった。


「その境遇には同情するが……、ここまで来たという事は、吾と戦う意思ありと見て良いか」

「ああ、まあ、あんたには恨みはないけどね! 変な首輪つけられちゃってさ、あんたと戦って倒さないと、あたしが死ぬらしいのよ」


あたしは自分の首を示した。クサレ王と腹黒神官があたしにつけた、黒い首輪がそこにあった。

魔王を倒すか、あたしが死ぬかしないと外れない。そして、一年の期限が過ぎると、自動的にあたしの首を絞めて命を奪う。こんなもろに呪いのアイテムを嵌めないと安心できないなんて、どれだけ他の勇者に反逆されてきたんだ。その勇者たちの気持ちわかるけど!


「死にたくないからここまで来たわ」


逃げ出す事すらできないから。


魔王は、あたしを見つめ、ふうと息をついた。


「まこと、愚かしい行いを繰り返すな、人の国の王とその取り巻きは。

哀れとは思うが、勇者よ。吾も殺されてやるわけにはゆかぬ」

「そうだろうね。あたしもこんな理由で殺しに来る人がいたら、全力で嫌がるし。でも、死にたくないからさ」


剣を構える。


「だから付き合ってよ、悪いけど。

礼儀らしいから、名乗るわね。あたしは透子。神山透子。食べ歩きが好きなただの女子高生……だった」

「トオコ」


魔王は、不思議な発音だと言いたげに、あたしの名前を繰り返した。


「礼にのっとり、吾も名乗ろう。

北の荒野、魔の一族を統べる王、

タラチ・イアンデス・グロウガリアス」


時が止まった。


「……は?」

「タラチ・イアンデス・グロウガリアス」


もう一度、律儀に名乗ってくれた。なんかいい人だな魔王! いやそれより。



「……………タラちゃんです?」



玲瓏たる声音と麗しい発音で名乗られたその名は、

一般庶民で、この世界の言語の発音に慣れていないあたしの耳には、某国民的アニメの登場人物の名前にしか聞こえなかった。

こんなに美形なのに、タラちゃん!

魔王さまなのに、タラちゃん! 

いとこの名前はイクラちゃんで、猫の名前はタマですか! そうしてお魚くわえたドラ猫を、追いかけたりするんですか〜っ!!!


「えっと、あ〜……」


走馬灯のように走る、元の世界のアニメの主題歌。霧散しかけた気力をなんとかかき集め、あたしは剣を構え直すと、魔王に言った。



「お母さんの名前は、サザエですか!」



……でも、やっぱり混乱していたらしい。




* * *




ピンポイントでギャグが書きたくなって、書いてみました。


とりあえずこのあと、魔王さまは首輪を外してくれ、元の世界に帰る方法を探してくれます。
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ゆずはらしの

Author:ゆずはらしの
「小説家になろう」にいくつか小説を上げています。

公民館で絵を教えています。水彩画。

紅茶、ハーブ、アロマなどが趣味です。でも手際はあまり良くない。お茶は淹れられるんだけどね。お茶はね!

思いだしたように記事を増やしてゆく予定。

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