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事件と言うか、……おいおい。という出来事ですかね……。

数年前、妹といっしょに、とある喫茶店に入りました。

デパートの一階にある、そこそこ綺麗、そこそこ美味しい、という感じの所です。コーヒーも紅茶もケーキもあって、どれも悪くはないけれど、飛びぬけて良いというわけでもない。けれど、その辺の安いばかりの店よりは良い。という感じの。

一応、紅茶も気を使って淹れてくれる。ティーパックではなく、茶葉を使って。

そういう所です。

私と妹は、……何かの時間つぶしだったと思いますが。そこに入りました。昼を過ぎて、四時前ぐらいでしたか。ちょうど、客が途切れる辺りです。店内には、わたしたちしかいませんでした。

メニューを見て。さて、何を頼もうかと悩み。二人して紅茶を選びました。

メニューには、こう書かれてありました。


『紅茶メニュー

アッサム

ダージリン

アールグレイ

ブレンド

フレーバード(ストロベリー)』



他にアイスティーのメニューもありましたが、割愛します。

紅茶の種類を見た私たちは、横に書いてある説明を見ました。茶葉の特徴や産地が書いてありました。

「あれ。ここのアールグレイ……、キームン使ってあるって書いてあるよ?」
「え、ほんと? 珍しいね」

アールグレイは、茶葉にベルガモット(柑橘類の一種)の香りをつけた、フレーバード(香りつき)紅茶の古典みたいなものですが。普通は、ベルガモットの香りを際立たせるため、アッサムやセイロンブレンドのような、あっさりした味の茶葉を使います。

キームンは中国系のお茶の木から作る紅茶で、独特のクセというか、香りがある茶葉です。

珍しい。と思った私たちは、注文を聞きにきたウェイトレスさんに、二人して「アールグレイ」と注文しました。

「アイスですか、ホットですか」

ウェイトレスさんは、高校生ぐらいの女の子でした。接客がぎこちない感じで、やや挙動不審に見える。あれー、慣れてないなあ。まあ、がんばれ。私たちはほほえましく思いつつ、「ホットでお願いします」と頼んだのです。

やがて、紅茶が運ばれてきました。

その店では、ポットで紅茶が出てきます。紅茶の入った、ティーコジーをかぶせたポットが、カップと一緒に運ばれてくるのです。二杯ぐらい飲める。

カップは温められていました。わかっている人が扱っているなと、うれしくなりました。

そうして、二人して、カップに紅茶を注ぎ。

ひとくち飲んで。

無言になりました。

「……」
「……」


いちごの味がする。


なぜだ。なぜ、ベルガモットの香りがするべき紅茶で、いちごの香りがするのだ。

「間違えた……のかな」
「ああ、そうじゃないかな。慣れてない感じだったし」
「どうする」
「あー……、一応、言ってみるか?」

慣れてない子の間違いだろう、でも、強く言って傷つけるのも可哀想だしね。と、ひそひそとささやきあい、私たちはウェイトレスさんを呼びました。

「はい、なんでしょう」

追加の注文かと、彼女はやってきました。そこで、言葉を選びながら、おだやかに、

「これ、注文した紅茶と違うみたいなんだけど……」と、言ってみたのです。

「え?」

ぽかんとするウェイトレスさん。それきり、何の反応もない。

仕方ないので、言葉を続けました。

「わたしたちは、アールグレイを頼んでのですが」

「え。あ。はい。アールグレイ」

おうむ返しに繰り返すウェイトレスさん。

「これ、アールグレイじゃないと思うのですが……」

はっきり言って別物です。でも、そう言ってみた。すると、彼女はわたわたと伝票を確認し。わたしたちを見て。

「あの、お客さま。

これがアールグレイです」

「……」
「……」

何ですと?

嘘をつけ。どう見たって間違いだろう。

言いたい気持ちをぐっと抑え、私は、

「でもこれ、いちごの味がしますよ。私たちの頼んだのは、アールグレイです」

おだやかに、言ってみました。するとウェイトレスさんは。

「だから、これがアールグレイです」

なぜか自信満々でした。

「あの、でも。ここのお店では、キームン使っているのでしょう、アールグレイに。これ、キームンじゃないです、この味は」

あまりに自信満々に言われたので、この人は、多少は知識を持っているのかと思い。それで、メニューに載っている説明文の事を口にしてみました。

「葉っぱはキームンじゃないし、いちごの香りしますし」

すると、彼女は。

「お客さまは知らないかもしれないけど、

アールグレイっていうのは、こういうものなんです」

きっぱりと言い切りました。

しかも言い方が、上から目線でした。

胸を張って、彼女は言いました。

「アールグレイっていうのはこういう味なんです。覚えて帰られたら良いですよ」

いや、われわれ、君より紅茶の事は知ってるから。

言いたくなったが我慢しました。妹の目がだんだん、ひややか~になっていました。

「この葉っぱ、キームンじゃないです。アッサムかセイロンブレンドでしょう」

もう一度、繰り返してみました。

「注文したのはアールグレイでしょう!」

なぜか声が大きくなるウェイトレスさん。

「だから、アールグレイって言うのは、ベルガモットの香りでしょう。柑橘系です。いちごの香りがするのはおかしい。それに、ここのメニューの説明文では、キームンに香りをつけたとあります。この茶葉の味は、キームンではない」

この人、全然知識がないんだなあ。そう思ってていねいにそう言ってみました。すると彼女は、

「だから、これがアールグレイなんですってば。もう、知らないのは仕方ないけど。アールグレイはこの紅茶です!」

……どうしていちいち、上から目線なんだろう。

困ったなあと思っていたら、何事かと店長さんがやって来ました。若い女性の店長さんでした。注文を取るのは高校生の彼女で、お茶を淹れたり、お菓子を作ったりは、こちらの店長さんがやっているみたいでした。

「どうかなさいましたか?」
「なんでもありません、お客さんが間違えただけ」
「アールグレイのホット、頼んだんだけど。違うの出て来たから」

ウェイトレスさんが、途中まで言ったのをさえぎって、ものすごく不機嫌そうに、妹が言いました。それまでは、私が話すのに任せていたのですが、もう嫌になったらしい。

「え?」
「だから、店長。お客さんの間違いです」

ウェイトレスさんは、まだがんばっていました。

「え、ホットって、伝票に」

店長は慌てて伝票を、彼女からひったくりました。

「だから、わけのわからない事、このお客さん、」
「この書き方は、ブレンドのホットでしょう!」

びしりときつく言う店長。面食らったように黙るウェイトレスさん。

どうやら、伝票の書き方があって、「アールグレイのホット」と書くべき所を、単に「ホット」とだけ書いたため、「ブレンドのホット」の意味になってしまったようです。店によって、略し方は違うと思いますが。

「すみません、お客さま。頼まれたのは、ブレンドだったのでしょうか」
「アールグレイ。ホットでって頼んだ。二人とも」

妹が一言。

「いれなおしてきます!」

ざーっと青ざめた店長。何が何だかわからないという顔をしているウェイトレスさん。

「もう良い。これで。これもせっかく、いれてくれたんだし」

ため息をついて、妹が言いました。面倒になったようです。私は、あわあわしている店長さんと、何だか良くわからんという顔のウェイトレスさんを見比べ。

「じゃあ、私は淹れなおしてもらいます。手間をかけますが、よろしいですか」

と声をかけました。すると何だか、助かったみたいな顔をされました

「すぐいれてきます!」

店長は、ウェイトレスさんをひっつかむと(本当にひっつかんでいた)。奥に引っ込みました。

次に来た時には、店長さんが自ら紅茶を運んで来ていました。ものすごく不安そうで、気の毒になりました。

「ありがとうございます」

別に、文句をつけたいわけではなかったので、軽く会釈して受け取って。

「すみませんでした。いちごのフレーバーはちょっと苦手でしたので。さっきのは、フレーバードだったのでしょう?」
「あ、いえ、ブレンドです。でもフレーバードを混ぜますので、うちのブレンドは」
「そうですか。びっくりしました。これ、いただきますね」

そう言うと、ほっとしたような顔をされました。

そのあとは、普通にお茶を飲んで、時間をつぶして、普通に店を出ました。おだやかな時間だったと思います。

とりあえず。

「知ったかぶりは良くない」。


ぼろが出て、ばれます。

どうも、このウェイトレスさん、自分が何か間違えたと認めるのが嫌で、とりつくろうとした挙句、こうなっちゃったみたいです。

お客を言いくるめようとまでしました。良く知らない事なのに、自分の方が知っていると言う態度を取って、お客に教えようとした。

自分を上に置こうとすると、そういう人ほど足場が崩れて、下に落っこちてしまうものです。謙虚に、知らない事は知らないと認めて、教えて下さいと頼む方が、誰にとっても良い結果になります。

このウェイトレスさんの場合は、良くわからない事があるのなら、もう一度、お客に注文の確認を取るか、店長に尋ねに行くかすれば、妙な事になりませんでした。

間違えたのなら、「間違えました。すみません」と謝って、わからないのなら、「アルバイトを始めたばかりで、よくわからなくて」と言って、教えてもらえば良かったのです。

自分の立場を悪くしないようにしようと、そればかりを考えての行動は、誠実さに欠けます。信用されません。

……でも、やってる本人は、気がつかなかったりするんだよねえ……。

あれこれ言いましたが。いろいろ考えるきっかけというか、ネタにはなったので。私としては面白い出来事でした。

私も同じこと、やってるかもしれないし。気をつけよう。
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【なんというか…】
紅茶の知識以前に接客の話しよね(^_^;)
客とやり合ってどうするんだ…
事情はどうであれ、客からクレームが出たら即、お茶を下げて責任者へ報告…だろうに
コーヒーもだけど特に紅茶は味がシビアだから、「入れ方が気に入らない」なんてお客だっているかもしれない。一介のバイトじゃ対応は難しいかも、お店の教育がよくなかったのかもね
【No title】
>ラナンキュラスさん

バイト始めて間がなかったのかもしれませんが……実際にはもっとタメ口でした。敬語が敬語じゃないと言う。

注文を取って来るぐらいなら出来るだろうと、店長さんは思ったのではないかな、と。

エプロンも、だらっとした感じに着ていたので、……うーん。あれは、適当にひもを結んだままにしておいて、それを、かぶっただけな感じ?

それ、言ったのは妹で。「エプロン、だらしなかった。端の方、汚れてシミできてたし」とぼそっと。従業員がそういう姿をしていると、店全体が悪く見られてしまうんですが……わからないんだろうなあ……。

紅茶にしろ、コーヒーにしろ、お店でいただくなら、きちっとした格好(別にドレスアップしろというのじゃなく、清潔だなと思える姿)で持ってきてもらいたい。客としてはそう思います。
【No title】
初めまして紅茶に最近興味を持ち始め初め調べていたらヒットしたので読ませていただきました。
私は今紅茶を茶葉でちゃんと出してくれる店をhを探しています。
コーヒーはどこでも種類が選べるのに紅茶は基本ティーバッグしかしてゃんと選べる所に行くとかなり高いリーズナブルでおいしい紅茶の飲めるお店を知りませんか?

【紅茶のお店】
レオンさん、初めまして。返事遅れてごめんなさいm(_ _)m

紅茶を美味しくいれようとすると、どうしても、ポットでいれることになるので、
小さい一人用のポットでも、ティーカップ二杯分ぐらいの量になります。

普通の喫茶店では、コーヒーが一杯三百円ぐらいでしょうか? 安い所では百五十円ぐらいかな。

紅茶の場合、しっかりした所はポットサービス(ポットで持ってきてくれる)のお店が多く、二杯飲むことを前提としているので、それで値段が高くなってしまうのだと思います。

だいたい、五百円ぐらいからでしょうか?

考え方を変えたら良いのだと思いますよ(-^〇^-)

お代わりができて、五百円ぐらい。そう考えたら、何となくお得な感じしませんか?

以前入った所は、ポットサービスで、紅茶だけを頼むと、クッキーが二枚、おまけでついてきました。そういうお店もあります。

美味しいお店ですが、見つけるの大変なんですよね……(-_-;)

日本紅茶協会という、紅茶の知識や飲み方を広めようとしているところがあります。ここは、かなり昔からあって、しっかりしている所です。

そこのホームページに、美味しく紅茶をいれていると認定されたお店が紹介されています。

お住まいの地域から、近いところを探してみてはどうでしょう?

なお、私は通販で良く茶葉を買いますが、

インド系の紅茶はシルバーポット、スリランカ系の紅茶はミツティというお店で買っています。どちらもオーナーが、紅茶好きすぎて現地まで行っちゃたよ、な人で、品質などには、ものすごくこだわっています。

シルバーポットの「ティータイム改造計画セット」は、初心者でも美味しく紅茶がいれられる、スグレモノ。ちょっと高いけど、道具にお試し用茶葉がついていて、おすすめです。

どちらもネットで検索すればすぐ見つかると思います。いろいろ試したり、探したりして、そういう時間も楽しんでしまって下さい。紅茶は、「ちょっと待つ」のが楽しい飲み物ですから(#^.^#)
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ゆずはらしの

Author:ゆずはらしの
「小説家になろう」にいくつか小説を上げています。

公民館で絵を教えています。水彩画。

紅茶、ハーブ、アロマなどが趣味です。でも手際はあまり良くない。お茶は淹れられるんだけどね。お茶はね!

思いだしたように記事を増やしてゆく予定。

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